空間の状態を変化させた時の残響時間の変化ってどうなるの?
Sabine(サービン)の残響時間の公式から、残響時間は面積に反比例すると考えた経験はありませんか?今回は立方体を想定して解説していきます。
問題文はこちらです。
上図の室における残響時間を求めよ。ただし、室容積Vは1000㎥、吸音力50㎡とする。また、この室容積を10倍にした時の残響時間を求めよ。この時、それぞれの壁の吸音率と縦横高さの比は変化しない。
それでは解説を始めます。
Sabineの残響時間を用います。サービンの残響時間の式は
Sabineの残響時間
T=0.16×V/ΣαiSi
=0.16×V/A
(V:室容積[㎥]、αi:i番目の壁の吸収率[-]、Si:i番目の壁の面積[㎡]、A:吸収力)
となります。
これを用いると残響時間Tは
T=V/A
=1000×50
=8000 [s]
となります。
次にこの室の室容積を10倍した時の残響時間を求めます。
残響時間は壁面積に影響するので、室容積を10倍した時の壁面積の値を計算しましょう。
室容積が変わった時の残響時間を計算するときのポイントは、総面積がどのように変わるのかです。
☆ポイント 残響時間の変化は総面積の変化☆
公式T=0.16×V/ΣαiSiをみてみると、面積が残響時間に関わることがわかります。
総面積の変化は、変化を単純化してみると計算しやすいです。
条件を見ると、それぞれの壁の縦横高さの比が変わらないことがわかるので、1辺の長さがxの立方体の場合で考えてみましょう。
元の立方体の体積がx3で、変化後の立方体の体積が10x3です。そうすると、変化後の立方体の1辺は3√10×xとなるので変化後の立方体の1面の面積は
S=(3√(10)×x)×(3√(10)×x)
=3√102×x2
となります。
元の立方体の面積がx2なので変化後の面積は元の面積の3√102倍となることがわかります。
Sabineの残響時間の式のAを3√102Aに変換すればいいので、室容積を10倍した時の残響時間は
T=V/3√102A
=1000×3√102×50
=37132.71…
≒37132 [s]
となります。
◦残響時間の変化は総面積の変化
今回の結果から容積が増えても単純に2倍、3倍のようにならない、つまり残響時間は室容積に比例しないことがわかりました。問題を解く際は、「単純に倍数にするのは簡単すぎるだろう」と気づけますので、公式を再度確認すれば思い出せると思います。
以上です。