建築学科の環境入門 -Architecture&Environment


演習


温度差換気の応用を解く!(温度差換気の公式の謎θo-θi)

温度差換気の公式にある温度の部分が(θo-θi)の時と、(θi-θo)の時があるけどどっちが正しいの?

公式と異なる点があると不安になった経験はありませんか?今回は演習を通して「温度差換気の公式の謎θo-θi」について解説します。

この記事を読むとわかること
温度差換気の公式の謎θo-θi
2条件ある時の問題の解き方が理解できます

それでは解説をはじめます。

問題文はこちらです。

上図のような窓が2つの住居があり、風向きが単純に決まっているとする。ただし、外気温をθo、室温θi、高低差hとして、室容積Vと流量係数αは変化しないとする。

ある時刻この住居では、温度換気のみで、v=0.8[m/s]θo=10[℃]、θi=22[℃]、h=2.5[m]で換気回数は2回/hである。少したった後、再度計測したところ温度換気のみでθo=25[℃]、θi=22[℃]、h=2.5[m]であった。この時の換気回数を求めよ。また、換気方向も考えよ。

2条件ある問題の解き方

この問題のポイントは、2つの条件の場合に、最初の条件(条件1)からどの情報を得られかがわかるかどうかです。

☆ポイント 2条件あるときは、最初の条件から情報を取得☆

2条件あるときは、同じ部分と異なる部分があるのでそこを確認しましょう。

まずは問題文にある条件1、2に分けてみましょう。

ある時刻この住居では、温度換気のみで、v=0.8[m/s]θo=10[℃]、θi=22[℃]、h=2.5[m]で換気回数は2回/hである。少したった後、再度計測したところ温度換気のみでθo=25[℃]、θi=22[℃]、h=2.5[m]であった。この時の換気回数を求めよ。また、換気方向も考えよ。

見やすいように離してみます。

[条件1]
ある時刻この住居では、温度換気のみで、v=0.8[m/s]θo=10[℃]、θi=22[℃]、h=2.5[m]で換気回数は2回/hである。

[条件2]少したった後、再度計測したところ温度換気のみでθo=25[℃]、θi=22[℃]、h=2.5[m]であった。

このように2つに分けれられました。

[条件1]から読み取れる情報は次の2点です。

・換気回数から換気量と室容積がわかる
・室容積は条件2でも利用可

換気回数

n=Q/V
(Q:換気量 [㎥/h]、V:室容積 [㎥])

これらを用いて解いていきます。

換気回数から室容積を求める!

温度換気のみの時の換気量の公式(参考:温度差換気を求める)に代入すると

Q1=αA√2gh( ρo-ρi)/ρ
1A1√(2×9.8×2.5・(22-10)/22+273.15 )×3600
1A1C条件1
ただし、C条件1=√(2×9.8×2.5・(22-10)/22+273.15 )×3600とする。

つまり室容積Vは、換気回数がn=Q/Vであることから

2=α1A1C条件1/V
→V=α1A1C条件1 / 2

となり、室容積がわかりました。後の条件時の換気回数n(=Q/V)を求めてみましょう。

室容積はわかっているので、後の条件時の換気量Q2を計算します。

Q2=αA√2gh( ρo-ρi)/ρ
  =α2A2√(2×9.8×2.5・|(22-25)|/22+273.15 )×3600
2A2C条件2
ただし、C条件2=√(2×9.8×2.5・|(22-25)|/22+273.15 )×3600とする。

となります。この式で温度差換気の公式にはない絶対値||が出てきました。公式ではQ=αA√2gh・θio/Ti ×3600となっていることに関して説明します。

温度差換気の公式の謎θo-θiを解説!

そもそもなぜθio(室温-外気温)という項順番なのかというと、建築は室内環境を主としているため室温θiから外気温θoが引かれるという形になっています。

しかし取扱点は換気が起こる要因である温度差(駆動力)であるため、温度差を純粋な値として利用できる絶対値||で扱っても大丈夫ということになります。

☆ポイント 換気式の圧力差は絶対値☆

差自体が駆動力となるので絶対値で扱えます。

実際に2条件の式を解く!

さて、換気量がわかったので換気回数n条件2を求めます。問題文から2条件における総合実行面積は同じα1A1=α2A2であるので、

n=Q2/V
2A2C条件2/(α1A1C条件1/2)
=C条件2/(C条件1 / 2)
=√(2×9.8×2.5・|(22-25)|/(22+273.15) )×3600 /(√(2×9.8×2.5・(22-10)/(22+273.15) )×3600)
=0.5 [回/h]

条件2の時はθo>θiであるので、換気の向きは換気(風力・温度差)の問題は基本式を覚えるだけでいいを参考にします。

答えは

n条件2:0.5 [回/h]
換気の向き:窓2→窓1

となります。

まとめ

「温度差換気の公式の謎θo-θi」に建築的な視点が加わっていることを解説しながら2条件の問題を解いてみました。

公式も理解すると覚えやすく、応用もしやすくなります。今までの数学のように純粋な数式としての公式に建築的な視点を考慮する必要が出てきましたね。

文中に紹介した記事も参考にしてみてください。

温度差換気を求める
換気(風力・温度差)の問題は基本式を覚えるだけでいい