建築学科の環境入門 -Architecture&Environment


実践


複数物質が発生する空間での換気について解説!

実際の状況では複数の物質が発生してるけど、その場合はどんな風に必要換気量を考えればいいの?

今回は喫煙を例として考えてみます。

外部であったり、整備された場所での喫煙は換気量が調整されているはずですがそれ以外の場所では換気が規定の分だけされているかわかりません。

仮想の空間を喫煙室として見立てて考えてみましょう。

この記事を読むとわかること
実際に複数の物質が発生するときの換気量の求め方や、その際の複雑な設定による難易度を下げる方法を解説します!

それでは解説を始めます。

問題文はこちらです。

上図の喫煙室における必要換気量と換気回数を求めよ。ただし室内人数は4名で一人当たりタバコを2本/hで吸う。人が排出する二酸化炭素を18l/h、外気二酸化炭素濃度は400ppm、タバコ一本当たりに発生する汚染物質はそれぞれ、浮遊粉じんは20mgとし、二酸化炭素と一酸化炭素は人から発生する量と比較すると非常に小さい為無視する。
また、室内空気環境の基準は次のようにする。
浮遊粉じんの量は0.15 mg/m3以下、二酸化炭素の含有率は100万分の1000以下(=1000 ppm以下)。
室内空気環境の基準については以下を出典とする。
出典:「空気環境の調整」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/を元に作成し加工した。

複雑な設定の問題の解き方

わかりやすいように諸条件を表にまとめます。

スッキリとして見やすくなりましたので、複数物質が発生した場合の換気の考え方について触れます。

複数物質が発生した場合の換気の考え方を解説!

ポイントは、各要素で一番大きい換気量を優先すればいいことです。

☆ポイント 各要素で一番大きい換気量を優先する☆

換気は空気という混合物の入れ替えであることを意識しましょう。

一般的な換気自体が1つの物質のみで行えるものではないので、換気回数が一番大きい物質を優先すればそれ以下の換気回数の物質も十に換気が行われます。

では、人とそれ以外の必要換気量Qと必要換気回数nを分けて考えてみましょう。

汚染物質の発生量を計算する!

人について

汚染物質の発生量は

18[l/h]×4[人] = 72[l/h]
=0.072[㎥/h]

となるのでザイデルの式から、ppmは100万分の1を表すことを考慮して

ザイデルの式

Q=K/Pi-PoK
(Q:換気量、K:汚染物質発生量[㎥/h]、Pi:内部汚染濃度[-]、Po:外部汚染濃度[-])

Q=K/Pi-Po
=0.072/{(1000×0.000001)-(400×0.000001)}
=120 [㎥/h]


n=Q/V
=120/(3×4×2)
=5 [回/h]

タバコについて

4人が2本ずつ吸うので、この部屋全体の発生量は

20[mg/h]×2[本]×4[人] =160[mg/h]

となり、換気量は

Q=K/Pi-Po
=160[mg/h]/{(0.15)-(0)}[mg/㎥]
=1066.6…
≒1067 [㎥/h]

n=Q/V
=44.4…
≒44 [回/h]

となり人とタバコの必要換気量と換気回数を比較すると

タバコの方が換気する必要があることがわかります。

よってタバコ向けの換気をすればよく、答えは

必要換気量Q = 1067 [㎥/h]
換気回数n  =  44 [回/h]

となります。

この条件の時、喫煙室の換気は十分に行う必要があることがわかりました。

まとめ

・複雑な設定の時は表にすると、グッと難易度が下がる
・換気とは特定の物質だけでは行えない。必ず複数の物質で構成されている「空気」の入れ替えであることを意識しよう
・発生要素の必要換気量を比較して大きい方を採用しよう

今回の条件は室内喫煙室や家でもありそうなものですね。安全の為にも喫煙する際は必ず換気設備の整った喫煙室か指定されている換気の十分な場所でしましょう。