建築学科の環境入門 -Architecture&Environment


解説


換気(風力・温度差)の問題は基本式を覚えるだけでいい

換気の式はわかるけど、実際どんな感じでおこるの?

公式や文章では換気を理解したけど、実際にどんな挙動を起こすかはいまいち掴めないと思ったことはありませんか?換気の基本を再度確認して、その挙動まで解説していきます。

この記事を読むとわかること
2つの換気「温度差換気・風力換気」の基本を解説して、絵を用いることで理解できます

それでは解説を始めます。

換気量の基本式を確認する!

換気量の基本式

Q=αA√( (2/ρ)・|Δp| )×3600 [㎥/h]
(ρ:外部空気密度(大体の問題で1.2で扱われます)、p:圧力、αA:総合実行面積、Δp:圧力差)

換気は圧力差が分かればいいんですね。

これは温度差・風力の両方で共通します。

温度差と風圧差の両方がある時の圧力差Δpは、温度でおこる圧力差と風力でおこる圧力差のそれぞれの和で求められます。

Δp=Δp温度+Δp風力

これを換気量の基本式にを代入して

温度差換気と風力換気がある時の換気量の式

Q温度+風力=αA√( (2/ρ)・|Δp温度+Δp風力| )×3600 [㎥/h]

次に温度差圧と風圧差圧はの求め方を確認します。

温度差圧と風圧差圧の求め方を確認する!

Δp温度とΔp風力はそれぞれ

Δp温度・Δp風力の式

Δp温度=(ρoi)gh
Δp風力=(ρo・V)(C1-C2)/2
(ρo:外部の空気密度[kg/㎥]、ρi:内部の空気密度[kg/㎥]、V:外部の風速[m/s]、Cx:風圧係数[-]、g:重力加速度[m/s2]、h:高低差[m])

ρは密度と気温の関係式を使えば温度から求められます。

(密度と気温の関係式 参考:温度差換気を求める )

で表せます。

風力換気がない場合はΔp風力=0、温度差換気がない場合はΔp温度=0とすれば良いのでこの式を覚えれば1つの式で十分となります。

基本式は以上です。

あとは換気が起こる要因を理解すれば、換気の基本は抑えられます。

換気はどのようにおこる?

まず換気とは内部の空気と外部の空気の入れ替わりのことです。

換気には2種類あります。
自然換気と機関換気です。自然換気は風や温度による圧力の変化で発生します。機関換気は換気扇やエアコンなどで機械で強制的に空気を入れたり出したりすることで、室内の空気量を調整する働きによって結果的に換気が行われます。自然換気について着目すると、風や温度が換気の駆動力になることがわかります。

風力換気は風圧の差で発生し、正圧から負圧に向けて換気が起こります。

風力換気における正圧と負圧とは?

上図のように風圧の正圧とは風が押す力で、負圧とは風が引っ張る力のことです。もう少し俯瞰してみてみます。

風を受ける反対側の面では、上から来た風によって引っ張られて負圧となっていますね。

室内における空気の動きを確認する!

温度差換気は温度変化によって空気の密度が変わり暖かい空気と比べると冷たい空気の方が密度が大きく重い為、暖かい空気が上へ移動し、冷たい空気が下へ動かされます。この為、温度差換気は高低差がないと起こりません。これが温度差による空気の移動となります。

また、室内と室外の温度の関係によって空気の流れは変わります。

外部から入った風はどのように移動するのか?

空気の流れは次のポイントを実践してみましょう。

☆ポイント 温度差換気の主語は外部からきた空気☆

主語である「外部から室に入る空気」が、どのように動かされ移動していくかが重要です。

下図から外部からきた空気について着目して見てみましょう。

左図では、外部からきた暖かい空気が室内の冷たい(重い)空気に押されて下方向に移動しています。右図では、外部からきた冷たい空気が室内の暖かい(軽い)空気に押されて上方向に移動しています。

まとめ

・自然換気は風や温度による圧力の変化で発生
・風力換気は風によって押されるか引っ張られる
・温度差換気は密度(質量)の違いによる空気の移動

これで、「換気(風力・温度差)の問題は基本式を覚えるだけでいい」は終わりです。今回のポイントである換気の主体はなんなのかは、教えてもらえないことですよね。

本質を理解できれば自分なりの表現ができるようになって、忘れづらくなります。いい表現が見つかったら、ぜひコメント欄で教えてください。