熱伝達率と熱伝達抵抗は逆数の関係じゃないの!?
熱伝達率は熱の伝えやすさ、熱伝達抵抗は熱の伝えづらさと説明されることがあるので、この2つが逆数の関係であると覚えてしまうことがありますよね。
今回は演習を通して熱伝達率と熱伝達抵抗の違いをわかりやすいように解説します。
それでは解説をはじめます。
問題文はこちらです。
上図の断面の壁の熱貫流率と熱貫流抵抗Rを求めよ。ただし、普通コンクリートの熱伝達率λ1=1.64[W/m・K]、松板の熱伝達率λ2=0.179[W/m・K]、空気の熱伝達抵抗ra=0.09[(㎡・K)/W]とする。
伝熱の分野では電気回路のアナロジーとして捉える方法がありますので、それを利用します。
電気回路では直列回路、並列回路がありましたが伝熱では直列回路を用います。直列回路を確認しましょう。
上図のように壁は板だけではなく、断熱材や空気層などが含まれています。伝熱において、空気を含め物体は全て抵抗となるのでそれぞれを直列回路の抵抗として全体の抵抗である熱貫流抵抗Rを導きましょう。
直列回路の全体の抵抗Rは各抵抗の和であるので次のように求められます。
R = R1+R2 +R3
伝熱の時でも同様に計算してみましょう。
R=ro+rコンクリート+ra+r松+ri
(ro:外表面熱伝達抵抗、ra:空気の熱伝達抵抗、ri:内表面熱伝達抵抗、r松:松板の熱伝導抵抗)
直列回路自体は中学校で習いましたね。しかし新しく外表面熱伝達抵抗、内表面熱伝達抵抗という抵抗が出てきました。これらを確認しましょう。
表面熱伝達抵抗は、壁付近での空気の対流によって発生する抵抗です。次のように表せます。
外表面熱伝達抵抗 ro=1/23
内表面熱伝達抵抗 ri=1/9
ここで、忘れやすい・間違いやすいポイントです。
☆ポイント 表面熱伝達抵抗は分数☆
「表面熱伝達抵抗は分数」と覚えよう!。
1/ro=23
1/ri=9
このように逆数で表現することがあり間違えやすいのでポイントを押さえて間違えないようにしましょう。
まずそれぞれの定義から見てみましょう。
熱伝導率は材料の性質としての熱の伝わり易さ
熱伝導抵抗は材料の熱の伝わり辛さ
を表します。
この違いは、
熱伝導率は「コンクリート」や「木」のようにその材料の「性質」だけに影響されますが、
熱伝導抵抗は材料の「性質」とその材料の「厚さ」にも影響されます。
材料が厚いと熱は伝わりづらいことをイメージするとわかりやすいです。
単位で見てもわかります。
熱伝導抵抗は [m2・K/W]、熱伝導率は [W/m・K]で表すので、単位で見分けてもいいですね。
定義を確認すると今回のテーマである「熱伝達率と熱伝達抵抗の違い」も分かります。
☆ポイント 熱伝導率と熱伝導抵抗は逆数で表せない☆
熱伝導率は材料の「性質」だけ、熱伝導抵抗は材料の「性質」とその材料の「厚さ」が影響する。
式で表すと以下のようになります。
r = l/λ
(r:熱伝達抵抗、l:材料の厚さ、λ:熱伝達率)
これも定義からみてみましょう。
熱伝導率は材料の性質としての熱の伝わり易さでしたね。
熱貫流率とは壁全体の熱の伝わり易さです。つまりこれらの違いは壁の一部の材料か壁全体か、と分かります。
まずは熱貫流率と熱貫流抵抗の定義からみてみましょう。
熱貫流率は空気が片方の空間から壁を通してもう一方の空間に移動するする際の空気の移動のし易さ
熱貫流抵抗は空気が片方の空間から壁を通してもう一方の空間に移動するする際の空気の移動のしづらさ
を表します。
これらは単純に壁を通して熱移動のし易さか、し辛さをと言う逆表現をしているだけなので逆数で表現できる関係にあります。
以上を踏まえて計算をします。
R = ro+rコンクリート+ra+r松+ri
=1/23+lコンクリート/λ1+0.09+l松 /λ2+1/9
=1/23+100×0.001/1.64+0.09+30×0.001/0.179+1/9
=0.4731…
≒0.473 [(㎡・K)/W]
熱貫流抵抗Rと熱貫流率Kは逆数の関係なので次のように計算できます。
K=1/R
=2.113….
≒2.11 [W/(㎡・K)]
答えは
熱貫流抵抗R=0.473 [(㎡・K)/W]
熱貫流率K=2.11 [W/(㎡・K)]
となります。
熱貫流率を求めることを通して熱伝達率と熱伝道抵抗が逆数で表せないことを解説しました。ポイントを確認して覚えてみてください。
また、伝熱は電気回路の直列回路と同じような考え方ができました。電気回路との違いは伝熱には表面伝達抵抗があることでしたね。覚えておきましょう。